
無銘
長崎スクール
約9.5×3cm
重約27g
古風巧工

18世紀以前の貴重差し根付。手に長笛のような楽器を持った異国人(紅毛人)のデザイン。大切に保存による状態良好(自立不可)。使われてきたので、艶出しがよく馴れた。大きく開けられた紐通しも魅力。
顔に特徴がある、口内の舌に細部の彫りが未だ綺麗に残っている男前。複雑に細密な彫りが施されている技術の高さにも驚く。一刀一刀の線の美しさと細部のつくり込みに惚れしてしまい、時間を忘れて手の中で見入ってしまう魅力たっぷりの逸品。

鶏や犬を抱異国人の図柄は、18世紀以前から有名で高価ながら量も少なくないので、入手困難位とは言い難い。喇叭(ラッパ)ではなく、中華長笛を持つ異国人の根付は初見。幕府鎖国政策の背景のうえで、本件は長崎地元師匠の作品以外は考え難い。仕上げが非常に綺麗な牙彫、当時オランダ人が特注で作られる可能性も否定しかねる。
傾斜する姿も悲哀な表情は特に心を打たされた。きっと望郷の憂愁を長笛で吹くことで表出に違いない。まるで「今宵来雁渡秋空、遠客思郷立晩風」(出典:煕春竜喜(1581)清渓稿)のオランダ版。
元来根付は腰に提げるものだから、かねてから私見として差根付のような自立しない物こそ、実用性に堪える良品だろう。幕末・明治期になると、ゴミ捨てられるように、17世紀や18世紀の根付も海外に流出したことは残念しか思わない。

参考:大英博物館蔵根付カタログ「NETSUKE- The Miniature Sculpture of Japan」P157(№355)
根付展—NETSUKE図版P176),日本経済新聞社主催(外務省、文化庁、アメリカ大使館後援),1981年5月
