The Hare With Amber Eyes
By Edmund de Waal
Vintage 2011/1
368p
自らもエフルッシ家の末裔であるエドマンド・ドゥ・ヴァールは、2011年に「琥珀の眼の兎」を発表した。ベストセラーとなった本書は銀行家一族の興隆と没落を跡づけ、著者自らのルーツを辿る旅でもある。
ウィーン・ユダヤ博物館(Jewish Museum Vienna)では、ドゥ・ヴァールから提供されたエフルッシ家の遺品や資料によって、展示品を収集した人々のパーソナルヒストリーを辿ります。展示の最も重要な部分はエフルッシ家の文書資料で、これは2018年ドゥ・ヴァールからユダヤ博物館に寄贈された。勿論博物物館への貸出品として展示する157点の貴重な根付も見物できる。
「人がもはやものごとに執着しなくなっても、かつて執着したものには何らかの感情が残ります。なぜなら、そこには常に、他人には理解できない理由があったからです」—(佐々田雅子訳、早川書房、2011年)より
エドマンド・ドゥ・ヴァールによるノンフィクション『琥珀の眼の兎』は、上記のようなマルセル・プルースト『失われた時を求めて』の登場人物シャルル・スワンの語りの引用から始まる。ドゥ・ヴァールはロンドンを拠点に活動する陶芸家で、テート・ブリテンやヴィクトリア&アルバート美術館に作品が収蔵されているほか、歴史家・批評家としても高い評価を得ている。その彼が、東京に住んでいた大叔父イギーから引き継いだ264点にも及ぶ根付のコレクションの来歴を調べ、その旅路を追ったのがこの本だ。